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B型肝炎給付金と肝がん -弁護士が教える肝がんの給付金額やこれを受け取るための要件-

B型肝炎給付金手続 弁護士
  • 肝がん(肝臓がん)って診断されたんだけど、B型肝炎給付金もらえるの?
  • 胆管がんって言われてるんだけど、B型肝炎給付金の対象なのかな?
  • もう治ってるんだけど、肝がんの給付金をもらえるの?
  • 肝がん診断されてから20年経つと給付金は減額されるの?

あなたもこういった疑問を持ったことがありませんか?

本記事では、肝がんの給付金額や肝がんの給付金を受け取る条件について、弁護士が解説します。

1 はじめに

B型肝炎給付金は、集団予防接種等*¹によって*²B型肝炎ウイルス(以下「HBV」といいます。)に持続感染*³した方やその相続人に対して支払われる給付金です。

B型肝炎給付金の請求は、社会保険診療報酬支払基金という民間法人に行います。請求する際には、国との和解調書が必要になります。そのため、請求の前提として、国との和解を求めて、裁判を起こします。この裁判をB型肝炎訴訟といいます*⁴。

肝がんの給付金額は、以下のとおりです。

原則 3600万円
発症から20年経過 900万円
*¹ 集団予防接種等とは、集団接種の方法で実施する予防接種とツベルクリン反応検査のことです。
*² 集団予防接種等によってHBVに感染した方には、一次感染者だけでなく、二次感染者と三次感染者も含まれます。集団予防接種等を直接の原因としてHBVに持続感染した方を一次感染者といいます。二次感染者は、一次感染者からの母子感染または父子感染によって持続感染した方です。三次感染者は、母子感染者からの母子感染または父子感染によって持続感染した方です。
*³ 持続感染とは、6か月以上継続する感染のことです。6か月未満で治る一過性感染と区別されます。
*⁴ B型肝炎給付金には請求期限があります。2027年3月31日までに裁判を起こさなければなりません。

2 肝がんの意義

肝がんとは、肝臓にできた悪性腫瘍です。肝がんの給付金を受け取るためには、持続感染を原因とする肝がんを発症したことが必要になります。

持続感染に起因することが必要なので、給付金の対象になるのは、原発性肝がんに限られます。原発性肝がんには、肝細胞がん(HCC)、肝内胆管がん(胆管細胞がん、ICC、CCC)、混合型肝がん(CHC)があります⁽¹⁾ ⁽²⁾ ⁽³⁾。

肝細胞がんは、肝細胞ががん化した悪性腫瘍です。

肝内胆管がんは、肝臓内を通る胆管細胞ががん化した悪性腫瘍です。

混合型肝がんは、単一腫瘍内に肝細胞がんと肝内胆管がんの両成分が混じり合っている肝がんです。

持続感染に起因する肝がんの多くは、慢性肝疾患が先行します。つまり、肝臓の組織が長期間にわたって破壊と再生が繰り返されるうちにがん細胞が発生します。もっとも、慢性肝疾患が先行することなく、肝がんを発症することもあります。HBVそれ自体が肝がんの原因だからです⁽²⁾ ⁽³⁾。

なお、転移性肝がん、腺がん、および、肝外胆管がん(肝門部胆管がんと遠位側胆管がん)は、持続感染に起因しないので、対象になりません。

3 肝がんの立証

肝がんで和解するためには、次の①と②の両方を立証する必要があります。

原発性肝がんを発症したこと
その肝がんが持続感染に起因すること(以下「起因性」といいます。)

①慢性肝炎の発症および②起因性を立証するための証拠には様々なものがあります。ここでは、その典型例を紹介します。

①原発性肝がんの発症を立証する証拠の典型例は、以下の証拠です。

原発性肝がんである旨の病理組織検査結果
原発性肝がんである旨の画像検査結果

②起因性を立証する証拠の典型例は、以下の証拠です。

①に先行して持続感染に起因する慢性肝疾患を発症していたことが記載されている医療記録
①の原因がHBV持続感染である旨の診断書とその裏付けとなる検査結果

なお、診断書を提出する場合、可能であれば、B型肝炎ウイルス持続感染者の病態に係る診断書(病態診断書、覚書診断書)を提出します。

この診断書は、虚偽と誤診を防止するための手当が施されており、通常の診断書よりも信用性が高められています。裁判所および被告である国以外への提出を予定しない診断書とすることで、虚偽診断書作成罪の成立を容易にし、医師が虚偽の診断を下すことを防止しています。また、作成権限を一定の専門医療機関に所属する医師に限定することで、作成者の専門性を担保して、誤診を防止しています。

4 肝がんと除斥期間

(1) 除斥期間の意義

肝がんの給付金は、原則として3600万円ですが、肝がんを発症してから20年を経過する前に裁判を起こさないと900万円に減額されます。この給付金の減額をもたらす制度を除斥期間といいます。

本来の除斥期間は、権利行使をしないまま一定の期間を経過すると当然に権利が消滅するという制度ですが、B型肝炎給付金制度上は、被害者救済の観点から、給付金の減額にとどめています。

(2) 肝がん再発と除斥期間

多中心性発生による肝がんを再発した場合には、除斥期間の起算日に注意する必要があります。

多中心性発生による肝がんとは、同時または異なる時期に発生した独立のがんです⁽⁴⁾ ⁽⁵⁾。このうち、過去に発症した肝がんの根治後における非がん部(治療後の残存肝)から新しい肝細胞がんが発生した場合には、新しい肝細胞がん発生時が除斥期間の起算日になります。

5 まとめ

B型肝炎給付金は、集団予防接種等によってHBVに持続感染した方やその相続人に対して支払われる給付金です。

肝がんで和解するためには、肝がんの発症と起因性を立証する必要があります。

肝がんの給付金は、原則3600万円、肝がん発症から20年を経過していると900万円です。しかし、多中心性発生による肝がんを再発した場合には、肝がん発症から20年を経過していても、3600万円になる可能性があります。

給付金を受け取るためには、様々な資料を集めて、自分が対象者であることを証明しなければなりません。その証明のためには、医学的・法律的な専門的知識が必要になりますし、医療記録の精査などのとても労力のかかる作業も必要になります。

もし、あなたやご家族様のHBV感染が集団予防接種等によるものかもしれないと思われるのであれば、お気軽に当事務所にご相談ください。経験豊富な弁護士が全力であなたをサポートします。

⁽¹⁾ 理化学研究所.肝がんの新しい分化分子分類と診断マーカー-日中共同による混合型肝がんのゲノム解析-.理化学研究所ホームページ.2019.https://www.riken.jp/press/2019/20190524_1/index.html,(参照2024-01-25)
⁽²⁾ 横須賀收,中本晋吾,神田達郎.ウイルス感染と腫瘍1)B型肝炎と肝発癌.日本内科学会雑誌.2015,104(9):p.1861-1865.https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/104/9/104_1861/_pdf/-char/ja,(参照2024-01-25)
⁽³⁾ 關場一磨,大塚基之,小池和彦,プレスリリース
B型肝炎ウイルスによる肝発癌機構を新たに同定.国立研究開発法人日本医療研究開発機構ホームページ.https://www.amed.go.jp/news/release_20210901.html,(参照2024-01-25)
⁽⁴⁾ 理化学研究所.再発性と多発性肝臓がんのゲノム診断-肝内転移による再発か多発性かを正確に診断-.理化学研究所ホームページ.2016.https://www.riken.jp/press/2016/20161124_1/index.html,(参照2024-01-25)
⁽⁵⁾ 前場隆志, 濱本勲, 壺内泰二郎, 岡田節雄, 橋本哲明, 若林久男, 田中聰.肝細胞癌切除後の残肝内異時性発癌に関する臨床的検討.日本臨床外科医学会雑誌.1944,55(9):p. 2224-2228.https://www.jstage.jst.go.jp/article/ringe1963/55/9/55_9_2224/_pdf/-char/ja,(参照2024-01-25)
弁護士 藤林 裕一郎
弁護士 藤林 裕一郎
東京弁護士会所属
この記事の執筆者:弁護士 藤林 裕一郎
1000件以上のB型肝炎訴訟を担当。被害者救済を信条とし、粘り強く事件に取り組む。検査結果やカルテが全くない事案、再活性を起こしている事案など、解決困難事例とされるケースも多数和解に導いてきた実績をもつ。B型肝炎給付金手続についての詳細はこちら
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