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B型肝炎給付金と死亡 -弁護士が教える死亡の給付金額やこれを受け取るための要件-

B型肝炎給付金手続 弁護士
  • 夫がB型肝炎で亡くなって、今後の生活が不安
  • 妻の死因は肝がんからの転移性肺がんなんだけど、B型肝炎給付金の対象になるの?
  • 父はB型肝炎が原因で亡くなったけど、亡くなってから30年経ってるから、B型肝炎給付金はもらえないよね?

あなたもこういった疑問を持ったことがありませんか?

本記事では、死亡の給付金額や死亡の給付金を受け取る条件について、弁護士が解説します。

1 はじめに

B型肝炎給付金は、集団予防接種等*¹によって*²B型肝炎ウイルス(以下「HBV」といいます。)に持続感染*³した方やその相続人に対して支払われる給付金です。

B型肝炎給付金の請求は、社会保険診療報酬支払基金という民間法人に行います。請求する際には、国との和解調書が必要になります。そのため、請求の前提として、国との和解を求めて、裁判を起こします。この裁判をB型肝炎訴訟といいます*⁴。

死亡の給付金額は、以下のとおりです。

原則 3600万円
死亡から20年経過 900万円

死亡の給付金は、相続人が請求することになります。相続人が複数人いる場合、全員で請求する必要はありません。その中の1人が他の相続人全員を代表して請求することはできます。

*¹ 集団予防接種等とは、集団接種の方法で実施する予防接種とツベルクリン反応検査のことです。
*² 集団予防接種等によってHBVに感染した方には、一次感染者だけでなく、二次感染者と三次感染者も含まれます。集団予防接種等を直接の原因としてHBVに持続感染した方を一次感染者といいます。二次感染者は、一次感染者からの母子感染または父子感染によって持続感染した方です。三次感染者は、母子感染者からの母子感染または父子感染によって持続感染した方です。
*³ 持続感染とは、6か月以上継続する感染のことです。6か月未満で治る一過性感染と区別されます。
*⁴ B型肝炎給付金には請求期限があります。2027年3月31日までに裁判を起こさなければなりません。

2 死亡の意義

B型肝炎給付金の対象となる死亡は、持続感染に起因する死亡です。

持続感染に起因する死亡には、いくつか類型があります。

その典型は、持続感染に起因する慢性肝疾患(以下「B型慢性肝疾患」といいます。)が直接死因の場合です。B型慢性肝疾患は、B型慢性肝炎、B型肝硬変、B型肝がんです。なお、B型慢性肝炎で死亡することはほとんどありませんが、B型慢性肝炎急性増悪*⁵を起こした場合には、劇症化して死亡することがあります。

また、持続感染に起因する急性肝疾患が直接死因の場合も、持続感染に起因する死亡に含まれます。たとえば、キャリアの急性増悪*⁶が劇症化して死亡した場合です。

さらに、B型慢性肝疾患を原因とする他の疾患を直接死因とする場合も、持続感染に起因する死亡に含まれます。たとえば、B型肝がんからの転移性のがんで死亡した場合やB型肝硬変の合併症で死亡した場合です。

肝がんの主要な転移先は、肺、リンパ節、副腎、脳、骨などです⁽¹⁾。

B型肝硬変の合併症には、胃や食道の静脈瘤、敗血症などがあります⁽²⁾ ⁽³⁾ ⁽⁴⁾ ⁽⁵⁾。

*⁵ B型慢性肝炎急性増悪は、一時的に強い肝障害が現れた状態です。B型慢性肝炎は、肝炎が継続するものの、肝障害の程度としては弱いのが一般的です。しかし、ウイルス量の急減な増加等によって、一時的に強い肝障害を起こすことがあります。
*⁶ キャリアの急性増悪は、持続感染者が免疫応答期に発症する一時的な肝炎です。

3 死亡の立証

死亡で和解するためには、次の①と②の両方を立証する必要があります。

死亡したこと
①が持続感染に起因すること(以下「起因性」といいます。)

①死亡したことを立証する証拠は、以下の証拠です。

日本国籍の場合 戸籍
外国籍の場合 外国人登録原票や住民票など

②起因性を立証するために必要になる証拠は、事案によって様々です。以下では、その典型例を紹介します。

死亡の原因Ⅰ欄にHBV感染やB型慢性肝疾患が記載されている死亡診断書
死亡の原因Ⅰ欄に慢性肝疾患が記載されている死亡診断書と、その慢性肝疾患がB型慢性肝疾患であることが記載された医療記録や入院証明書
死亡の原因Ⅰ欄に慢性肝疾患が記載されている死亡診断書と、その慢性肝疾患がB型慢性肝疾患である旨の診断書*⁷や医療照会書
B型慢性肝疾患や持続感染に起因する急性肝疾患で死亡したことが記載されている医療記録や入院証明書
*⁷ 診断書を提出する場合、可能であれば、B型肝炎ウイルス持続感染者の病態に係る診断書(病態診断書、覚書診断書)を提出します。この診断書は、虚偽と誤診を防止するための手当が施されており、通常の診断書よりも信用性が高められています。裁判所および被告である国以外への提出を予定しない診断書とすることで、虚偽診断書作成罪の成立を容易にし、医師が虚偽の診断を下すことを防止しています。また、作成権限を一定の専門医療機関に所属する医師に限定することで、作成者の専門性を担保して、誤診を防止しています。

4 死亡と除斥期間

死亡の給付金は、原則として3600万円ですが、死亡日から20年を経過する前に裁判を起こさないと900万円に減額されます。この給付金の減額をもたらす制度を除斥期間といいます。

本来の除斥期間は、権利行使をしないまま一定の期間を経過すると当然に権利が消滅するという制度ですが、B型肝炎給付金制度上は、被害者救済の観点から、給付金の減額にとどめています。

5 まとめ

B型肝炎給付金は、集団予防接種等によってHBVに持続感染した方やその相続人に対して支払われる給付金です。

死亡で和解するためには、死亡したこととその死亡が持続感染に起因することを立証する必要があります。

死亡の給付金は、原則3600万円、死亡日から20年を経過していると900万円です。

給付金を受け取るためには、様々な資料を集めて、自分が対象者であることを証明しなければなりません。その証明のためには、医学的・法律的な専門的知識が必要になりますし、医療記録の精査などのとても労力のかかる作業も必要になります。

もし、あなたやご家族様のHBV感染が集団予防接種等によるものかもしれないと思われるのであれば、お気軽に当事務所にご相談ください。経験豊富な弁護士が全力であなたをサポートします。

⁽¹⁾ “肝臓がん(肝細胞がん)治療”.がん情報サービス.https://ganjoho.jp/public/cancer/liver/treatment.html#:~:text=肝細胞がんは,だといわれています%E3%80%82,(参照2024-01-25)
⁽²⁾ 水野理文, 西山泰暢, 清水聖一, 北川元二.肝硬変に合併した菌血症の臨床的検討.感染症学雑誌.1996,70(5):p. 456-462.https://www.jstage.jst.go.jp/article/kansenshogakuzasshi1970/70/5/70_5_456/_pdf/-char/ja,(参照2024-01-25)
⁽³⁾ 静間徹, 小幡裕, 橋本悦子, 白鳥敬子.肝硬変に併発した菌血症と肝硬変の重症度との関連.肝臓.2003,44(12):p. 641-648.https://www.jstage.jst.go.jp/article/kanzo1960/44/12/44_12_641/_pdf/-char/ja,(参照2024-01-25)
⁽⁴⁾ 杉村文昭, 山口善久, 脇山耕治, 八木直人, 田上誠二, 元木康文, 稲垣勉, 原本富雄, 松井秀夫, 伊藤和郎, 工藤勲彦, 岩崎有良, 荒川泰行, 松尾裕, 本田利男.肝疾患と消化管病変の関連性の検討.日本消化器内視鏡学会雑誌.1987,29(5):p. 903-911.https://www.jstage.jst.go.jp/article/gee1973b/29/5/29_5_903/_pdf/-char/ja,(参照2024-01-25)
⁽⁵⁾ 水野秀城, 加賀谷尚史, 大石尚毅, 鷹取元, 山下竜也, 水腰英四郎, 酒井明人, 中本安成, 本多政夫, 金子周一.肝硬変に伴う門脈圧亢進症における小腸病変の検討.日本消化器内視鏡学会雑誌.2011,53(6):p. 1600-1608.https://www.jstage.jst.go.jp/article/gee/53/6/53_6_1600/_pdf/-char/ja,(参照2024-01-25)
弁護士 藤林 裕一郎
弁護士 藤林 裕一郎
東京弁護士会所属
この記事の執筆者:弁護士 藤林 裕一郎
1000件以上のB型肝炎訴訟を担当。被害者救済を信条とし、粘り強く事件に取り組む。検査結果やカルテが全くない事案、再活性を起こしている事案など、解決困難事例とされるケースも多数和解に導いてきた実績をもつ。B型肝炎給付金手続についての詳細はこちら
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